CONCEPT

私達と世界。


特に1990年代後半にかけて、いつでも世界の先端をどこでも取り出せる、そんな構想も夢ではない。そんな気にさせるほど、私達と世界は近くなりました。一方その過程で、地域という空間は切断されたり、無視されたりしながら、加速する世界の中で圧縮され、加熱した競争主義における優先度の低いものとして、地域は世界からこぼれ落ちて行きました。

しかしその世界基準の合理化だけが、本当に私達の生活を豊かにするのでしょうか。「世界」という極度にメタ化した視点では、個々の性質というものは霞んで見えます。ですが私達の地べたの生活というものは、個々の性質が地域という土壌で具象化され、文化へと至るその営みから、暮らしに瑞々しさを作り出すものであります。性質が切り裂かれ、境界が無効化した領域は、世界の座標軸で表されるだけの虚ろな空間になってしまいます。それは地域という概念の終焉であり、「個」の消失に直結します。地域という大地を失ったとき、私達の人間性を表現したものはどこに実るのでしょうか。

私共はこう考えます。世界は、「地球規模」で括るだけではなく、「地域規模」で綴る必要があると。国境を越えて、いつでもどこでも世界標準の技術と経済を享受できる、それは素晴らしいことです。しかし一方、極端な方向へ急行する可能性に対し、ブレーキを掛ける作用も同時に求められるのではないでしょうか。その両極のバランス関係こそ、本当の意味で私達を豊かにしていくものだと考えるのです。

よってこの組織では、拡がりゆくグローバリズムの侵食から地域を防護するため、芸術を戦術とし、文化を戦略とする長期的ビジョンから、出版という装置で作戦を実行します。芸術機能が発端となり、その情報が社会に晒され事件化していくことで、私達は地域の認識を更新することができる。その時、慣れ親しんだ風景の中に、旅するような、はじめての光景を私達は見いだすことができる。これが文化という役割であり、その時普遍化された価値観は、また新たな文化さえもつくり出す発端となる。そのような展望から、この素晴らしい北海道で、この美しい北海道と関わる人たちと共に、地球規模化がもたらす世界の均質化から北海道を守り、「地域規模」の文化が継続的に発生する環境づくりを趣旨とし、私たちはここに「北海道冒険芸術出版」を設立します。

そして北海道冒険芸術出版は、その希望ある社会で、作られたイメージ操作に甘んずることなく、まだ見ぬ北海道を発見し、ありのままの北海道を伝えることで、文化を受け継ぎ、未来に引き継ぐことを目指す、そのための活動を行います。

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